ちょっと出遅れた感がありますが、ソ連・ロシア好き界隈で話題になっている『共産テクノ』という本をかってにステマしようと思います。
四方 宏明 (著) 『共産テクノ ソ連編』
ヘッドホンをつけたゴルバチョフが素敵な表紙
鎌と鎚ならぬヘッドホンとマイク
そもそもこの本のタイトルである「共産テクノ」とはなんだろう?もちろんこんな単語は存在していない。いや、存在していなかった。
「共産テクノ」とは、冷戦時代にソ連を中心とした共産主義陣営で作られていたテクノポップ~ニューウェイヴ系の音楽を指します。
とそこでは定義されている。
本書は共産テクノの第1弾の「ソ連編」としてソ連共和国内で活躍したテクノポップ系アーティストが紹介されている。
ちなみに続編として「東欧編」も計画されているらしい。
そして本書の中身だが、ひとことで言うとものすごい濃さ。おそらく日本語で紹介されるのが初めてなアーティストがほとんどだろうし、ロシアでもここまでソ連のテクノポップ系アーティストを網羅した本は存在しないのではないだろうか?
もくじ
ページ両脇にあるジャケットを眺めてるだけでも楽しい
ロシア人何人かに見てもらったのだが、「こんなにたくさんあるのに知ってるのがほとんどない」と感想をもらった。
その中でも日本でもロシアをかじってる人にはたいてい知られているКИНО(キノ)など有名どころも紹介されている。
ここで少し本書で紹介されている音楽を適当にピックアップ。
ヴィチスラーフ・ミシェーリン電子楽団の「Popcorn」
Hot ButterのPopcornはテクノポップのルーツの一つで世界中でカバーされている。
ガガーリンも宇宙でミシェーリンの音楽が頭に流れたとか。
コーラ・ベルドィの「ハニーナ・ラニーナ」
ハバロフスク近郊のナナイ族の村出身のコーラ・ベルドィ。口琴のビヨンボヨンなる音が不思議なサウンド。
ラジオノフ&チハミロフの「マラソン」
「スポーツと音楽」シリーズの第一弾、「パルス1 コンピューターミュージック」の中の1曲。
ソ連スポーツ委員会が体を鍛える文化の重要性を伝えるため制作し、国営レコードからリリースされた「スポーツテクノ」だ。
グリゴリー・グラトコフの「ジュピター」
ソ連の人気子ども番組などに出演していたグリゴリー・グラトコフの「子供ディスコ」シリーズの一つである、「宇宙ディスコ」からの一曲。
ここでは大雑把にピックアップしましたが、本書ではかなり細かく紹介、説明されているので資料集的な価値がかなり高いです。
そして本題も素晴らしいのですが、ちょっと横道にそれるコラムも素晴らしい。
私もソ連カルカルなどで紹介した「ソ連パクリ音楽」もコラムにあります。
なぜ盗作疑惑が多い状態なのか?と考察が書かれているのですが私はその4として、「著作権という概念が存在しない」を追加で提案します。
これはロシア人と付き合いがあればわかると思います。私もいろいろなところでこの発言をしているのですが、今でもあの国の人達は著作権に対してかなり無頓着です。どんな真面目っ子でもなんでもすぐにダウンロードします。
さらに、『モスクワ 不思議の都』という1990年、ソ連崩壊直前に出版されたモスクワのガイドブック的な本があるのですが、この本で紹介されている場所を現在のモスクワで巡る旅がコラムになっています。
これを見た時、なんで思いつかなかったんだ!とちょっとやられた感がありました。
この本、実は私も所有しておりまして、去年Twitterで紹介したらAmazonから瞬く間に在庫がなくなったという、意に反してステマしてしまった思い出のある本。
そして去年モスクワに行った時になんでこれをやらなかったのかと…
さらにさらに、個人的に一番興味深かったコラムが、ロシア・アバンギャルド風デザインのジャケットを集めたコラム。
このコラムだけでもこの本を買う価値があります!
古今東西のロシア・アバンギャルド風ジャケットがこれでもかというくらい並べてあるんです。
これだけで一冊の本を出して欲しいくらいの私が好きなジャンルです。
とまあ、こんな感じで『共産テクノ』はテクノポップ、または音楽に興味があってもなくてもロシアに少しでも興味があれば楽しめる内容な本です。
もちろん音楽好き、テクノポップ好きにもおすすめな濃い内容。
ぶっちゃけると私はテクノポップに興味が無いというか、どんな音楽のジャンルかも全く知らなかったのですが本書は楽しむことができました。
これは買いですよ!
P.S. 私の音楽趣味で言ったらブルース・ロック関係が好きなんで『共産ブルース』とか誰かやってくれませんかね?
そもそもそんなジャンルがあるのかも知りませんが…