ユトクさんの描く、『すっぽんとねこみしか』というマンガをご存知でしょうか?
Instagramでロシア人に人気があり(私の知り合いのロシア人にもファンがいます!)、主にロシア語で描かれているマンガです。
先日偶然に知り合いになる機会がありましたので、いろいろとお話を聞いてみました!
『すっぽんとねこみしか』とはどんなマンガ?
全人類が火星に引っ越しして、生き物だけの星になった未来の地球がお話の舞台。
主人公はタイトル通り、すっぽんとねこみしか。
Суппон すっぽん
発明家。「すっぽん」という言葉は日本語。
ロシア語では “дальневосточная черепаха”という。鼻が長い。
日本語そのまま、亀のスッポン。以前、作者の石山さんがスッポン飼っていたのでそこから名付けられたそうです。
Нэкомышка ねこみしか
父親は日本のネコ、母親はロシアのネズミ。女性の名前だが(аで終わってるので女性名)、本人は男である。色々と大変な状況に見舞われているが、いつも笑顔で乗り越える。
両親は ネコとネズミ。
Нэко = 日本語の「ねこ」
мышка = 読み方は「ムィーシュカ」、「みしか」。ロシア語で「ネズミ」という意味。
昔からロシアファンだったユトクさん。しかし、学生時代はロシア語とは無縁の生活を送っており、20代後半になってから独学で勉強を始めた。
「ロシア語でマンガを描いて公開すると、ロシア人から文法についてツッコミが入ったりして話が盛り上がる。それによって交流が生まれる。それが楽しいんです。」
Чай или кофе?
お茶かコーヒーどうする?
”или”, пожалуйста.
”или(か)”をください。
Вот, Это ”или”
はい、これが ”или(か)”です。
Спасибо
ありがとう。
Эй Суппон. Это не “или”. Это “либо”
おい、すっぽん。これは“или(か)”じゃないよ。“либо(か)”だよ。
Ой, извини. Я перепутал их
ああ、ごめん。勘違いしてたよ
「ロシア語を勉強していて新しい単語覚えても、同じ意味の違う単語が出てきたりします。そういうときは先が長い感じがして、辛くなる時がありますね (笑)。
例えば、или(=または)という単語を覚えたと思ったら、同義語のлибоというのもあるのがわかったときとかです。こういう、ロシア語学習での悔しさを表現した作品もあるんです。」
ユトクさんがロシアを知ったのは子供の頃遊んだテトリスがきっかけ。
耳から離れないテトリスのBGMに始まり、ロシア飛行機のプラモデル、チェブラーシカ、ソ連の歴史…とユトクさん曰く、「素朴で怖くてかわいい」ロシア謎めいた魅力に刺激を受け続けていました。
そして、2003年。モスクワ経由でチェコへ行く予定が機材トラブルのためモスクワで一泊することに。バスで市内のホテルに移動となったのですが、猛スピードで霧の中を突っ走っていくバスが衝撃的だったとのこと。また、ホテルではビニール袋に入った青りんごとヨーグルトを、朝食にと渡されてまたびっくり。このような経験をして、「この国は放っておけない!」とロシア熱が決定的なものになったそうです。
「自分はロシアから大きな影響を受けました。だから今度は自分がロシアの人たちに影響を与えたい!」
Привет, Онй-сан.
やあ、鬼さん
Что ты делаешь?
何してるの?
Работаю. Я вахтёр “地獄”
仕事中だよ。俺は”地獄”の門番なんだ
“地獄(Зигоку)” – это ад. Преступники живут здесь вечно. В аду есть гора иголок и кровяное озеро.
「ジゴク」というのは”ад”のことだよ。悪いことをした奴らは、永遠にここに住むんだ。地獄には針の山と血の湖があるんだぜ。
Ох… это страшно. Но я бы хотел ходить и смотрить вид!
うわ…それは怖い。でも僕、見に行ってみたいなあ!
Конечно. Но вы уже согрешили? Например, совершили убийство…
もちろんいいさ。でもお前ら、罪を犯したのか?例えば、殺人とか…
Нет, нет! Тольк осмотр!
いやいや、ただ見るだけだよ!
Только осматривать? …Вам все же нужно хочь чуть-чуть согрешить.
見るだけ? …ちょっとでいいから悪いことしなきゃ駄目さ。
Лёгкий грех… Ну, писать “попа” на камене. Как?
ちょっと悪いことか… じゃあ、岩に「オシリ」って書こうか。どう?
Хм… Окей. Добро пожаловать в ад.
うん…いいだろう。地獄へようこそ。
『すっぽんとねこみしか』には、ときどき漢字が出てくる。
例えばこの、«Суппон и Нэкомышка хотели осматривать ад»(すっぽんとねこみしかは地獄を見学したかった)の回には、「地獄」という漢字が登場します。
これは、日本語を話さないロシア人が見て、「これは何て読むんだろう?」「どういう意味だろう?」などと話が盛り上がればと思い書いたそう。
ユトクさんはInstagramでマンガを発表するだけではなく、実際の本も作り、モスクワで販売しています。
「ロシアの書店に3冊郵送し、『よかったら僕の本をお店で売ってください。この3冊分の売上金は差し上げます。その後、もし良ければ正式に契約させていただきたいです。』といたように売り込みをしました。」
この行動力の素晴らしさにより、モスクワの美術館、«Гараж»のミュージアムショップで本の取り扱いが始まり、噂を聞きつけたトレチャコフ美術館の向かいにある日本をイメージしたカフェ、«Японокафе»から「うちにも置かせて!」とお声がかかり、現在モスクワではこの2箇所のお店で本を買うことができます。
これまでに3巻を出版。1巻、話数が少なかったので別冊的に1.5巻。1.5巻の次は2巻ではなく3巻。とイレギュラーなところがまたユニーク。
そしてさらにユニークで関心してしまうことが。本はすべてユトクさんの手作りで製本されています!
本の制作、販売だけではなく、手作りグッズの販売やロシアでワークショップなどの活動も行っています。
先日行われたモスクワでのワークショップでは、ユトクさんと一緒にマンガを描くことを楽しみにした大勢のファンたちで賑わったそうです。
個人でここまで日露交流ができる、めっちゃハラショーなユトクさんと『すっぽんとねこみしか』、今後の活躍にも期待です!
みなさんも是非チェックしてみてください!!
ちなみに、Sputonikにも記事があるのでもっと詳しく知りたい方は合わせてご覧ください。
Suputnik 日本:すっぽんとねこみしか 日本人がロシアの子どものための漫画を制作
実はこのスプートニクの記事を書いた記者に、ユトクさんを紹介していただいたのでした。