どぎつい緑のタルフンなどのロシアオリジナル炭酸飲料が美味しいから飲みまくってきた

去年の夏、モスクワで飲んでからはまっている飲み物がある。タルフンという炭酸飲料。今までのモスクワ滞在でも飲んだことはあったのだが、去年飲んだものがとても美味しくそれから病みつきになってしまったのだ。

 
 
このどぎつい緑色の飲み物がタルフンだ。タラゴン、別名エストラゴンと呼ばれるハーブを使った炭酸飲料。タラゴンのロシア語がタルフンなのでそのままな名前。どぎつい緑色をしているけどこれは着色料などを使っていないらしい。草っぽいというかハーブらしいというかちょっとクセのある味でハッカやミントのようなスースーした感じもある。日本人の友人が多いロシア人の話だと何人かの日本人に勧めてみたがみんな一口でギブアップ。シャンプーや歯磨き粉のような味がすると言いお気に召さなかったようだ。なので私が「美味しい」と言うと驚かれた。はじめて美味しいって言う日本人に出会ったらしい。ここのタルフンは自家製(メニューでは「自家製タルフン」と記載されていた)で、本物のタラゴンも添えてありかなり本格的な味。
 
このタルフンはソ連時代に人気の出た飲み物。1981年以降にに人気となったらしい。植物園で販売していたものが人気となり、1983年にそのレシピがソ連全土のソフトドリンク工場に伝わり、ソ連国民の喉を潤していった。誕生したのはもっと古く、1889年のこと。グルジアの若い薬局店員、ラギドゼ・ミトラファーンさんが開発したもので第一次世界大戦前に多くの国際的な賞を受賞していたということだ。
 
そう、このタルフンはグルジア生まれの飲み物。この美味しいタルフンを飲んだ店もグルジア料理の店。その名も「ハチャプリ」。ハチャプリとはグルジア料理を代表するチーズ入りのパンのような食べ物。料理の名前がそのまま店名になっている。わかりやすいっていいね。
 
ハチャプリにはいろいろな種類があり、地方によって形や作り方が違ってくる。私が好きなものはアジャリア風ハチャプリ。
 
 
これ!見ただけで美味しいって分かりますよね?チーズの入ったパンの真ん中を凹ませてタマゴを落とすのがアジャリア風。アジャリアとはグルジア国内のアジャリア自治共和国のこと。ちなみに今はグルジアはジョージアという呼び方に変わったけれども、ロシア語はグルジアのままなのでこの記事ではグルジアで統一してあります。
 
ちなみにこのアジャリア風ハチャプリには正式な食べ方がある。
まず、真ん中の卵を潰して混ぜる。チーズとも混ざる。
 
 
次に、ナイフではじから切っていき、タマゴとチーズに絡めて食べる。
 
ほら、美味しそうでしょ?これが小サイズで290ルーブル。2017年3月のレートで約600円。
 
 
グルジア料理と言えば、今モスクワであちこちに出来ている「ヒンカリナヤ」というレストランがある。ヒンカリとはこれもまたグルジアを代表する料理で、ググると「グルジアの水餃子」とか「グルジアの小籠包」などと説明されている。ここのお店もまた料理名をそのまま店名にした感じだ。わかりやすいっていいよね。
 
 
これがヒンカリナヤのヒンカリ。1つ45ルーブル。90円。でも最低3つからじゃないと頼めない。中身は牛、合い挽き、羊などがあった。味はスパイシーな水餃子、小籠包と言った感じで日本人にはけっこう食べ慣れた味だと思う。
 
そしてここにもハチャプリ(アジャリア風)
 
ここのハチャプリはタマゴが生。これもとても美味しかった。
 
今回の記事のメインであるタルフン。
 
 
ここのタルフンはタルフンをレモネードで割った感じのタルフン。タルフン独特の風味がマイルドになっていてタルフン初心者にはおすすめの味。しかし逆にタルフン原理主義者にはちょっと物足りない。美味しいけどね。
 
グルジア料理レストラン以外でもタルフンはもちろん売られている。
 
モスクワ中心部にあるビブリオ・グロブスという大型書店の地下にあるカフェで頼んだタルフン。ここのタルフンは鮮やかな緑というよりも抹茶っぽい色をしている。夏行ったときは売っていたのだが、今年の冬に訪れた際は売っていなかった。メニューには書かれていたけど注文したら「ないよ」と言われた。ロシアではよくあること。
 
 
さらにタルフンはスーパーなどでビンやペットボトルでも売られているので買いやすい。
 
 
 
日本人に何も言わずに渡せばメロンソーダだと思われるに違いない。味はタルフン風味がかなり少ない。商品によって風味の大小はあるけどやっぱりカフェで出てくる自家製にはかなわない。例えるなら上島珈琲のメロン果汁をちゃんと使ってるメロンクリームソーダと、果汁0のファンタメロンを使ったマックのメロンクリームソーダ位の差だ。
 
 
タルフンは前述したとおり、ソ連時代に人気の出た飲み物だ。ソ連時代には自動販売機で売られており、現在でも当時の自動販売機を復刻したものが公園やショッピングモールに置かれていて買うことができる。そして、以前紹介し、おそロシ庵プロデュースの「モスクワソビエトツアー」でも訪れたソビエトアーケードゲーム博物館に当時の自販機がそのまま置かれており、現在でも現役で稼働している。
 
 
中を開けて説明してくれた。意外とスカスカだった。
 
 
 
味はおそらく町中に置かれている復刻版と同じもの。もしかしたらビンやペットボトルで売られているものと同じものかもしれない。
 
 
 
他にもロシアを代表する炭酸飲料がある。クワスという黒パン(ライ麦パン)を発酵させて作られた炭酸飲料だ。これはかなり有名なのであえてここで詳しく説明するものではないかもしれない。ロシアでは最もポピュラーなソフトドリンク、炭酸飲料。ソフトドリンクだけど発酵させているので微量なアルコールも混ざる。特に夏によく飲まれる。暑い中で飲む冷たいクワスは格別な味。そのクワスの味を表現するのは難しい。甘いビールのような、パンのような…。酒ではないけど発酵しているのでお酒っぽく、微炭酸で甘いけれど全くくどくなく、スッキリした味わい。ペットボトルでも売られているし、手作りのもあるし、街角で売っているものもある。そして物によって味がちがう。よく、「一回チャレンジしたけど美味しくなかった」という人がいるが諦めないで色々と試してみて欲しい。おそらく本当に美味しいもの、自分の口に合うものが見つかればクワスに対するイメージも変わるはず。
 
今まで飲んだクワスで一番美味しいクワス。「モスクワソビエトツアー」でお邪魔したダーチャの方が手作りしたクワス。
 
 
スーパーで普通に買うことができるペットボトルのクワス。
 
 
街角で売られているクワス。このようにロシアのどこにでもクワスは存在している。
 
 
 
去年、白クワスなるものを発見した。クワスは普通黒いのだがこれは白いのだ。
 
白クワス「家族の秘密」という商品名。怪しい。
一緒にいたロシア人も初めて見たというので買ってみた。味は…ダメ。これはダメなものだ。一口でギブアップ。水にイーストを入れてそのまま発酵させたような臭くて酸っぱい味。ロシア人何人かにも飲ませてみたけど全員ダメ。「人類が口にしてはいけない味」とも言われた。腐ってる疑惑も。もしかしたら本当に腐ってて、腐っていないものは美味しいのかもしれないが再チャレンジする勇気はない。ここ数年で口の中に入ったもので一番やばかった。この味が家族の秘密の味なら家から出さないでずっとしまっといて欲しい。
 
 
 
 
他にもロシアにはロシア独特のたくさんの炭酸飲料がある。それらはレモネードと呼ばれる。レモネードと言うと、レモンシロップを水や炭酸水で割ったものを想像するが、ロシアではこの限りではない。甘い炭酸飲料は全てレモネードと呼ばれるのだ。とくにシロップを炭酸水で割ったものがレモネードと呼ばれる。つまり、タルフンはレモネードの一種だ。
 
ロシアでレモネードが飲まれ始めたのは18世紀のピョートル大帝のころ。彼は外国の習慣などを真似るのが好きであり、ヨーロッパ旅行からレモネードを持ち帰った。タバコやコーヒーなども持ち帰ったのだがこれらは国民にあまりウケなかった。しかし、レモネードは受け入れられた。「集会でレモネードを飲みなさい」というおふれを出すと貴族たちは喜んで従った。最初は貴族だけのものだったが、しばらくすると一般階級にも広がっていったが高価なものだったのでお金のある人しか飲むことができなかった。
 
20世紀初頭、レモネード生産を工業化し大量生産されソ連時代に国民の定番の飲み物として定着した。
 
 
 
食堂やスーパー、街角のスタンドでこのようなものを見かけることがある。これはレモネード用のシロップ。このシロップを炭酸で割りレモネードを売っている。
 
グム百貨店で頼んだレモネード。何味だったかは覚えてない…。25ルーブルだったのは覚えている。値札も写っているしね。
 
 
 
 
スーパーでは瓶に入ったレモネードが売られている。真ん中の緑色のは先ほど紹介したタルフン。
 
 
 
 
洋ナシ味。小さな瓶と大きな瓶がある。ペットボトルでも売られている。
 
 
シトロ
フランス語のcitron(レモン)が語源と言われている。ロシアに来たのは1812年。「本当のシトロは特別なビュッフェかボリショイ劇場でなければ飲めない」という噂がたちソ連で人気となった。噂を聞いてシトロを飲むためにボリショイ劇場へ足を運ぶ人もいたらしい。当時作り方はトップシークレットだった。材料は砂糖、炭酸水、バニラエッセンス、クエン酸、果物か柑橘類のシロップなど。
 
 
レモネード
 
これはレモン味のレモネード。つまりレモネードのレモネード。ややこしい。
 
 
 
ブラチーノ
 
ブラチーノとはソ連版ピノキオのこと。ソ連時代に最もポピュラーだったソフトドリンク。味は…はっきりいうと今まで紹介したレモネードは同時に飲み比べないと味の違いがわからない。それくらい微妙な差。洋ナシの味もレモンの味も言われればするし言われなければわからない。何か微妙に違うなということは分かるけど、その差が何なのかがわからない。でもタルフンは別。タルフンはわかりやすい。
 
 
クリームソーダ
 
日本のクリームソーダはアイスが浮かべてあるがロシアのクリームソーダは別物。150年位前に発明されたらしい。伝説によるとこれもタルフンの発明者と同じ、ラギドゼ・ミトラファーンが発明したらしい。炭酸水と卵白で作るのが正しいレシピだがこのようにビンで売られているのものは別のレシピだろう。
 
 
 
バイカル
 
1973年、コカ・コーラのライバルとして発明された飲み物。ロシアコーラ。
モスクワオリンピック前に広く販売されるようになり、売り出されると同時にすごく人気が出た。
水、砂糖、クエン酸のほかに、オトギリソウ、スペインカンゾウ、ウコギエキス、ユーカリ、レモン、ローリエ、モミの精油などが入っていた。コーラ版養命酒のような感じ。体にいいような味がする。
 
 
このようにスーパーで売られているどこでも買えるようなレモネードもありまうが、カフェやレストランでしか飲めないその店オリジナルのレモネードもあるので最後に紹介します。
 
 
ラズベリーとオレンジのレモネード
 
タルフンのところで紹介した、モスクワの中心にある本屋、ビブリオ・グロブスでタルフンがなかったため代わりに頼んだレモネード。爽やかな酸味と甘さで美味しかった。真冬でも本屋の中は暑いので冷たいレモネードが美味い。
 
 
 
 
キュウリレモネード
 
「一番美味しいレモネードはこれだ」と日本食レストランでウエイターのお兄さんにおすすめされたレモネード。
サラダの皿の底にたまった水を炭酸で割ったような青臭いレモネードでした。他にも美味しいレモネードたくさんあるだろうに…。騙されたのかな。
 
 
 
今までロシアで飲んで写真を撮っておいた炭酸飲料だけをざっと紹介してみましたが結構な数になりました。しかし、ロシアにはまだまだたくさんの炭酸飲料があります。スーパーで売られているものからその店でしか飲めないオリジナルのもの、ソ連時代から飲まれ続けているもの、新しくできたもの、などなど。
みなさんもロシアに行った際にはいろいろ試して飲んでみてください。そして美味しくないと思ったものでも店やメーカーを変えれば美味しいかもしれないので諦めずチャレンジしてみてください!
 
 
それにしても、日本でタルフンが飲めるようにならないかなー。

 

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