世界で活躍する脱サラロシア人アーティストのマックスが来日したので話を聞いてきた

先日、2018年10月17-18日の2日間、東京の赤坂で開催された「日本におけるモスクワ文化の日」というイベントで、ロシア人のアーティストであるマックス・ゴシコ-ダンコフ(Max Goshko-Dankov)の巨大な塗り絵ウォールが展示された。
2.5×7mの壁両面がまるで巨大絵本の見開きページのようになっており、片面は日本、片面はロシアのイラストが描かれている。来場者がこのイラストに自由に色を塗り、アートに参加できることが今回の目玉企画。
このロシア人アーティストのマックスが、日本で自分を紹介してほしいというので話を聞いてきた。
「No Photo Please」と冗談をはさみつつ「下から見上げるように撮ってくれと」
と言われて撮ったマックスの写真
聞き手:Murasakitonbo
写真・編集:ちばユウタ
ちなみに…
ちばはこの日人生最大の寝坊をかまして遅刻し、マックスに会えたのは10分だけという体たらくでした。
スマホが何故かシャットダウンしててアラームが…

マックス・ゴシコ-ダンコフはスモレンスク市出身の36歳。マックスは現在ロシアで知名度もあり、人気のあるアーティストだ。ポップアートとフィギュラティヴ・アートを組みわせるマックスの独特なスタイルは世界各国のブランドに注目されている。
これまでに、Kiehl’s、Levi’s、MINI、Huwawei、Mercedes-Benz、MasterCard、Toyota、Volkswagenなど様々な企業とコラボしてきた。
Huwaweiとのコラボ
マックスは自分のアートについて、「色が非常に大事。色を通じて世界を見る。これからのリサーチは色である。色は自分の名刺のようなもの。」と語る。

脱サラして世界的アーティストに

しかし、彼はもともとアーティストとして活動していたわけではない。子供の頃からアートに興味を持ち、芸術児童学校を卒業したが、大学では芸術とは無関係な言語と文学を専攻。モスクワ大学でジャーナリズムを勉強した。
大学卒業後もアートとは関係のない普通の会社に就職。
ロシアでは仕事を辞めてタイやバリなどに移住し、ネット上で仕事をする、いわゆる「ダウン・シフティング」する人が多い。
マックスは、僕がしたのは「アート・シフティング」だと言う。
30代に入り、「自分がやっている仕事は本当に一生やりたい仕事なのか?」、「自分は幸せなのか?」と考え出し、2015年2月に会社を退職。アーティストとして生きていくことを決意。
会社員時代に様々な国際プロジェクトに参加し、バコラ・バンヌ、キャロライナ・ヘレラ、フィリップ・スタルク等の世界的に人気のあるアーティストたちと知り合い、感銘を受けたことがアートの世界に戻る理由の一つとなったという。
今回のイベントで展示された塗り絵ウォール。片面にロシア、片面に日本が描かれている。

マックスと塗り絵ウォール

これまでマックスは様々な場所で今回のような塗り絵ウォールを発表している。
モスクワ(2016年)、ソチ(2017年)、イスタンブール(2017年)、北京(2017年)、香港(2018年)、ソフィア(2018年)、ヴァルナ(2018年)
世界中の国と都市を旅するようになった。今までこの塗り絵ウォールに参加した人数は10万人以上。
今までで最大のウォールは2017年にモスクワで作られた3.5x8mのもの。また、2016年に出版された「Dream cities」という塗り絵の本はモスクワでベストセラーとなった。
塗り絵ウォールに色を塗る子どもたち
塗り絵ウォールを始めたそもそものきっかけは何だったのか?マックスがざっくりと説明してくれた。
イースターの飾りとしてジャイアントエッグになにか模様を描いてくれと、モスクワ市商業課から依頼があった。しかし、マックスは宗教フリーなアートを志していたので、この依頼を断った。代わりに、壁に模様を描くのはどうだろう?と提案した。
「街中の壁で塗り絵を作ってみたい」というのは以前から考えていたことで、実行に移すチャンスが巡ってきたのだ。
提案は受け入れられ、街に仮の壁を設置し、その壁にマックスが模様の輪郭だけを描き、誰でも自由に色を塗れるようにした。これは大成功だった。
その後はゴーリキー公園の門を飾り、文化庁の目に止まり、今回も文化庁・商業課の依頼を受けての来日となった。

日本の印象

今回が初来日のマックスに日本の印象を聞いてみた。
「東京は好き。東京の印象はレゴランドのような箱を並べたような街。縦と横の線がクロスしているクリアラインの町並みで清潔。来日前に予想していた東京はまさにこのイメージ。
東京は閉じられている。他のアジアでよく見る屋台がなく、建物の中に入ると初めていろいろな店などがあり、新しい世界が広がる感じ。
例えるならミンスクに似ている。」
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マックスのInstagramより

日本に来れて嬉しい?
「もちろんうれしい。どう道を歩いたり、飲み屋でどのようにしているか、日本人はどのように生活を送っているかが見たかった。」
マックスは歩くのが好きでホテルのある銀座から六本木まで歩いたり、インタビューの日はマックスが来日して3日目だったが、会った時点では徒歩移動のみでまだ一度も電車に乗っていないとのことだった。
今回の来日でなにか不満はある?
「東京は好きだけど、噂で聞いてた女の子のパンツの自販機を未だ見れていないのが唯一の不満。」
日本の美術や日本人アーティストに影響を受けてきた?
「意識している限りでは受けていない。アーティストの表現というのは今まで見たものが消化され、その人なりに現れるので、今まで見た日本人アーティストの作品がどこか頭の奥にあると思うが、具体的にこの人の影響を受けたなどとは言えない。
日本人、舞踊、日本画などの日本文化はとても独特で、細かいところを非常に大事にしている。ここ10年間、日本はトレンドを作る国となっていて、日本では日常的にあるkawaiiは世界に大きなインパクトを与えている。」


マックスを紹介してくれた日本を紹介するロシアの雑誌、Kimono Magazineのナスチャと

趣味でアートをやっていたとはいえ、仕事を辞め数年でここまで世界に注目されるアーティストになったマックス。
今後さらに活躍していくこと間違いなし!日本の街中でマックスの作品が数多く見れる日が来るのも、そう先のことではないかもしれません!
マックスのHP:https://www.mgdankov.com
おまけ

塗り絵ウォールが展示されていたイベント、「日本におけるモスクワ文化の日」にいた、チェブラーシカとワニのゲーナ。

 
 
おそらくロシアからやって来た彼らは日本で見るかわいいチェブ達とは違い、本場の雰囲気(?)を漂わせていて怖かった。本場から来たのに偽物っぽい。
これを見たロシア人達も、「狂ったチェブ」「二人は二日酔い」などと言っていた(笑)

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