ロシア人の知らない言葉「シベリアで木を数える」はどこから来たのか?

「シベリアで木を数える」という表現、知っていますか?
ロシア好きの方ならネットで一度は目にしたこともあるかと思います。
 
シベリアでは木を数えることくらいしかやることがないということから、「シベリアで木を数えてこい」などといった感じでシベリア送りを遠回しに伝える表現です。
 
先日の「シベリアで木を数えるくま」Tシャツの通販開始記事でも書きましたが、この表現、私の周りのロシア人は全く知らないのです。

ロシア人が知らない言葉

そもそもなんでこの絵を落書きしてたかというと、前回の通販の注文者の方から、
 
「シベリアで木を数える簡単なお仕事」をロシア語で書いてそれをモチーフにしたデザインを作って欲しい。
 
というリクエストがあったからです。
 
で、なんとなくシベリアといえばクマ。ということでクマが数えてるところを落書きしました。
 
そしてこの、よく日本のネットで見かける、「シベリアで木を数える」という表現。
ロシアでもよく言うのかと思いロシア人に聞いてみたのですが誰も知りませんでした。
少なくとも私の周りのロシア人はまったく聞いたこともない言葉だそうです。
 
なので、デザインにはその言葉は盛りこんでません。
раз два три(1,2,3)とクマがつぶやいてるだけです。察してください。
 
 
日本のネット上では、この表現はロシアでは昔から使われている表現だ。と説明する文章があふれています。
 
例えば、
 
 
ソ連の懲罰でよくシベリアで木の数を数えるといいますが、本当に数えさせていたのですか?
 
 
シベリアは「木の本数を数えるくらいしかやる事が無いくらい何も無い場所」って事です。
 
 帝政時代の言い回し。昔は貴族の流刑地というか左遷先だったので「する事がない」
って表現になる。収容所ができて「する事がない」どころじゃなくなっても言葉は残っ
た。
 
 日本でも「臭い飯を食う」とか言うでしょ。
 
 
いやいや、そんな言葉ロシアに残っていなんですって!
ロシアにその表現があることすら疑わしい。 
少なくとも周りのロシア人は誰も知りませんでした。
 
だいたい日本のネット上ではこのように「ロシアでは昔から使ってる言葉」として説明されているのですが、曖昧な説明で出典も何も書かれていないのです。
 
 
そして昨晩からこんなやり取りがありました。
 
Libra@Libra02324038

@Goncharov_jp おお、となると日本が発祥の言い回しである可能性があるのか・・・
ネット、あるいはシベリアに抑留された方々が発祥だったりするんでしょうか・・・
案外、小林源文先生とかが発祥だったりして。

2016/07/05 19:41:57

 
どうやら確実な証拠として残っているのが1986年に出版されたアメリ人のトム・クランシーが書いた小説、『レッド・ストーム作戦発動』らしいのです。
 
 
『レッド・ストーム作戦発動(ライジング)』(原題 Red Storm Rising)は1986年に発表された、アメリカの作家トム・クランシーとラリー・ボンド(en:Larry Bond)の共著による軍事シミュレーション小説。
 
東西冷戦時代のヨーロッパ及び大西洋を主な舞台としたNATO軍とワルシャワ条約機構軍の全面戦争が描かれている。超音速爆撃機による空母機動部隊への空襲、潜水艦による巡航ミサイル攻撃、当時まだ存在が公開されていなかったステルス攻撃機による奇襲攻撃、F-15発射のASATによる衛星攻撃など、核兵器を除く多様なハイテク兵器による現代戦の様子が緻密に描かれている。
 
実際の軍事対決のシーンはラリー・ボンドがデザインした海戦シミュレーションゲーム「ハープーン」での綿密なシミュレーション結果に基づいて描かれている。
 
 
 
この作品より以前に「シベリアで木を数える」という表現はあったのか?
そもそも日本やアメリカの作品発ではなく、ロシア発の言葉ではないのか?
 
更に調べていきますと、ロシアのブログでこれについて言及しているものをついに発見しました。
 
アメリカなど、ロシア以外で作られたソ連を舞台にした映画のレビューブログです。
 
ここには、
 
アメリカで作られたソ連を舞台にした小説、映画などには「ロシアのことわざ」としてロシアでは使われていない言葉を引用することが多い。
 
 
と書かれており、例えとして、トム・クランシーの『レッド・ストーム作戦発動』から下記の文章が引用されています。
 
 
アレクセーエフは「彼は木を数えに送られるにはまだ若いな」と言った。それはロシア帝国時代から残っているロシアのことわざだった。シベリアに送られる人は木を数えることしかやることがなかったと言われていた。
 
 
つまり、『レッド・ストーム作戦発動』内に書かれている「ロシアのことわざ」はトム・クランシーの創作であり、日本のネット上で「昔からロシアで言われている」という説明も『レッド・ストーム作戦発動』を読んだ人が信じた結果だと結論付けられないでしょうか?
 
男塾の民明書房を信じたちびっこたちと同じではないかと私は思います。

この件について、100%ロシア発祥の言葉ではない!と断言することができないのですが、かなり真実に近づいたのではと思っています。
 
異論反論大歓迎です。
ぜひ、確かな証拠を持っている方、知っている方は教えて下さい。
お待ちしております。