頭痛は気圧のせい?おそロシアの天気が人体に及ぼす影響

「ああ、頭が痛い。今日は天気が悪いからだ。」
このようなフレーズを、筆者はもう1000回ぐらいは聞いただろうか。そして、それを理由に会社を休むのである。
ロシアに来たばかりの頃は、なまぐさロシア人が会社を休む言い訳にすぎないと思っていた。
しかし、後におそロシいこの低気圧は、ついに筆者の身体までをも蝕むことになる。

文章:とらまるはなばち

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数年前のある日、まだ留学中だった筆者は、ロシア人の友人と遊ぶ約束をした。
その日の天気は曇りであったが、雨は降らなさそうだった。出かけようとしたその時、その友人から電話が入った。
急な体調不良なのでこの日は会えないと。頭痛がひどいそうだ。
具合が悪いのなら仕方が無い。彼女の体調が回復してから、日を改めて会うことになった。
初めはわからなかったが、付き合いが長くなっていくにつれて、彼女がよく頭痛を起こしていることに気づいた。
しかし、頭痛持ちの人は日本にもいるし、彼女も生まれつき頭が痛くなりやすい体質なのかと、特に気には留めていなかった。
 
その後しばらくして、筆者はモスクワで働くことになった。
ロシア人職員は、なんだかいつも「頭が痛い」と言っている。何が頭痛の種になっているのか。仕事か?上司か?
あまりにも痛い、痛いと言うのだが、しばらくするとケロっとしていることもあったので、ロシア人は噂で聞いていた以上に仕事をサボりたいのだなと思った。
きちんとしたロシア人もいるので、こんなことを言うと失礼に当たるかもしれないが、はっきり言って彼らには、日本人のような勤勉さや繊細さは無い。
隙を見ては休もうとするし、勤務時間中の態度も不真面目な人が多い。
そして、自分には面倒な仕事が回ってこないようになんとか努力し、回ってきそうになったら、人のいい人や立場の弱い者にそれを回すのである。
そして、自分はのんびりと過ごし、定時5分前からコートを着始め、定時が終わった瞬間に「また明日」と足早に去ってゆく。
残業を控え、有給をきちんと消化するのは良いことで、これは日本も見習うべきところがあるが(日本では休暇が取れなさすぎるし、定時帰りもままならない!)、ほとんどのスタッフの勤務態度等を見ていると、あんな人達に休暇を取る権利なんて与えたくないと思ってしまう。
頭痛の話に戻るが、彼らは本当にいつも頭が痛くなるという。
ある日、ロシア人上司が眉間に皺を寄せて頭を抱えていたので、何事かと聞いたら、低気圧のせいで頭が痛いという。
なんとか頭痛薬を飲んで仕事を続けていたが、帰るまで辛そうだった。
この上司は、隙を見ては仕事をサボったりするような人ではなかったので、本当に頭が痛いのだとわかった。
また、しばらく会社に勤めていると、日本人の先輩の一人がひどい頭痛持ちであることがわかった。
いつも遅くまで残業していたので、疲れすぎているのかと思っていたが、頭痛の原因がいつもそうだとは限らないようだった。
天気の悪いある日、一緒に昼食を取っていると、「痛い、痛い」と言い出した。
昨日の残業が祟ったのかと思いきや、いつもそうとは限らないそうで、この日は低気圧が来ているからだと答えた。
ちなみにこの先輩は、事務所で最も優秀と言っても過言ではないほど真面目に仕事をこなし、皆の尊敬を集め、上司からも大変気に入られている。
不真面目ロシア人とは全く対照的なのである。そんな先輩が嘘をつくはずがない。本当に頭が痛いのだ。
この日、とうとう耐えられなくなった先輩は、昼食後に早退してしまった。
 
この先輩、ロシア在住歴がとても長く、私なんかとは比べ物にならないぐらい長いのだが、長く住んでいるとここの気候が体調に影響を及ぼすようになるのであろうか?
 
 
最初は疑っていたが、ついに頭痛が筆者にも襲い掛かる日がやってきた!
あれはたしか、例によって天気があまり良くない日。朝から頭がガンガンして、起き上がるのもやっと。これほどの痛さだと、通勤はとてもできない。
いつも多少の体調不良や微熱なら、薬を飲んで無理やり会社に行くが、この日はそれどころではなかった。
とりあえず一日休みをもらって安静にしていることにした。
この日を境に、天気が悪い日には必ずと言っていいほど頭が痛くなるようになった。
痛みのレベル1~2ぐらいで大したことがない日は会社に行くが、レベル8~9は絶対安静、10は半死状態である。
そして思った。自分の身体はロシアの気候に蝕まれてきているのだと。
そして悟った。今までただサボりたいがために「頭痛がする」と口に出してきたサボリ屋のロシア人でも、きっと半分以上は本当のことを言っているのだと・・・。
それからさらにしばらくの間ロシアで働いたが、その間おそロシアの気候は、私を慢性的な気管支炎に落とし入れた。
一ヶ月のうち、咳をしていないのは1週間だけ。
一度喉風邪を引くと、治るまでミニマムで2週間、マックスで1ヶ月はかかる。
咳をしすぎたおかげで腹筋が多少鍛えられたが、何だかどの薬も効かないような気がしてきた。
事務所では、ロシア人達は筆者をバイ菌を見るような目で見て、マスクをしろという。
言われたとおりにするが、彼らは自分たちが咳をしている時は絶対にマスクはしない。
理由は、格好悪いから。
自分に菌がうつるのは怖いが、自分のが人にうつるのはどうでもいいらしい。
 
そしてその頃、健康面だけでなく、職場やアパートなど様々な問題も起こったため、やむなく退職し、日本に帰ることにした。
日本に帰ると、まるで嘘だったかのように頭痛と気管支炎は完治した。
帰ってきて正解である。日本の冬はモスクワほど寒くないし、何より空気がきれい。
そして、季節の変わり目のジェットコースターのような気温の上がり下がりもなく、春は緩やかに暖かくなり、秋もゆっくりと空気が冷えてゆく。
(ロシアでは、先週まで25度ぐらいで暑かったのに、翌週いきなり雪が降ったりする!)
おだやかで良い国ではないか。
こうして、筆者のロシア勤務時代は幕を閉じた。
これからロシアに駐在する人、留学する人、その他長期で滞在する予定のある人は、気をつけて欲しい。
特に空気の汚い大都市・モスクワへ行く人は要注意・・・
気管支炎にならないように。
そして、低気圧=頭痛の日であることを、忘れないで欲しい。
 
ちなみに、日本でも季節の変わり目には体調を崩しやすいし、頭痛持ちの人もたくさんいるだろう。 
しかし、ロシアでは症状がその何倍も強くなる可能性があるということを、ぜひ覚えておいて欲しい。

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