皆さんは、ロシアで日本料理を食べたことがあるだろうか?
昨今はますます自称・日本料理を出す店が増えているが、そのほとんどが怪しげな料理ばかり。
ご飯が外側、海苔が内側に巻いてある巻き寿司(ロシア人はこれを「ロール」と呼ぶ)は出すお店があまりにも多いため、すでに見慣れてきたがこの他にもおそロシアなレシピは無数に存在する。
また、最近では一般家庭でも自称・日本料理を作る人が増えているようで、インターネットやTVでも多くのレシピが紹介されている。
そんな中、蕎麦も一般的になってきたようで、だいたいどこのスーパーマーケットに行っても、蕎麦の乾麺が売っている。
実はロシアでも蕎麦をよく食べる
もともとロシア人は蕎麦の実を茹でて食べるので、麺にしてもそれほど抵抗がないのかもしれない。
加えて、最近は健康志向の人が多いので人気が出たらしいと、おそロシ庵のロシア人メンバーHandusha記者が言っていた。
この蕎麦の麺、普通に茹でて麺汁につけて食べると、まあまあ美味しいので、私もモスクワで時々食べていた。
しかし、ロシアのスーパーの日本食コーナーに、蕎麦はあっても、麺汁が売っていないのはなぜだろうか?その答えは、すぐに見つかった。
この蕎麦のパッケージの裏面を見ると、なんと焼き蕎麦の作り方が書いてあるではないか!
なるほど、ロシア人はこうやって食べるのか。だから麺汁が要らないのだ。
それにしても、普通の蕎麦で焼き蕎麦を作るとは、日本人としては許しがたい。そして、この解説は一体・・・?
「焼き蕎麦・・・日本の伝統的な料理で、肉と野菜とともに油で炒めた、蕎麦の実から作った麺。
独特の後引く美味しさは、特別なヤキソバソースによって加えられる。
この醤油と酢のソース、魚のだし、そしてゴマのハーモニーが、麺にはっきりとした、濃厚でほのかな甘みと、うっすらとした香りを与えてくれる。
この料理の主な材料は、蕎麦の麺、細かく切った豚肉と野菜(パプリカ、タマネギ、セロリの茎)である。
焼き蕎麦は、メインディッシュとして食卓に出される。」
一体どこの誰が、こんな謎の代物を堂々と「日本の伝統的な料理」と決めたのだろうか。全く、嘘も甚だしい。
しかし、日本で食べられているロシア料理が、ロシア人にとっては「?」と思われることもあるようなので、ここはお互い様・・・無理やり自分にそう言い聞かせた。
「製造元に文句を言っても仕方あるまい。私は断固としてこの焼き蕎麦レシピに反対する。日本流の食べ方でしか食べないぞ!」
しかし、なぜかわからないが、しばらくして私の考えは変わった。待てよ、このレシピは一度再現してみる価値があるのではなかろうか?
もしかすると、案外美味しいかもしれないし、何より、おそロシ庵のネタになるじゃないか!
というわけで、7月某日、おそロシ庵メンバーがちば編集長宅に集結し、筆者はロシアで手に入れたこの蕎麦を携えて向かった。早速調理開始!
材料
蕎麦の麺(150グラム=2分の1パッケージ)、3センチ幅に切った牛肉、野菜(パプリカ1個、タマネギ1個、セロリの茎1本)、ニンニク2片、ソース(※)
※パッケージのレシピによると、専用ソースが売っているらしいのだが、どこを探しても見つからなかった。
さすがはロシアである。仕方がないので、今回は日本で売っている焼きそばソースで代用した。
作り方:
1. 蕎麦をパッケージから出して、10分茹でる。
2. 茹でている間に、野菜を切る。
3. 次に、牛肉を3センチ幅に切り、ニンニクはスライスする。
4. 蕎麦が茹で上がったら、水で一度洗い、その後水を切る。
5. 先ほどの肉とニンニクに、ソースをかけて混ぜ、15分置く。量は適当。
(専用ソースがある場合は、3分の1パックを使用。残りは後で使うので、取っておく。)
6. フライパンに油を引き、5の肉と野菜を炒める。
レシピによると、先にタマネギを炒め、次に肉を入れて2分炒めたあと、セロリとパプリカを追加してもう2分炒めるらしいが、
筆者は間違えて肉を先に炒め、そこにタマネギ、そして他の野菜を入れてしまった。まあ、大して味が変わることはないだろうが・・・。
7. 6で炒めたものを、一旦皿に移す。
8. フライパンに再び油を引き、水切りをした4の蕎麦を、弾力が出るまで4~5分炒める。
9. そこにソースを合わせてさらに3分炒める。
(専用ソースの場合は、残り全てを入れる。)
10. 先ほどの具材と麺を合わせ、よく混ぜて出来上がり。
さて、皆で食べた感想は・・・?
・激マズかと思っていたが、案外食べられる味。
・焼きそばとしてはどうかと思うが、これはこれでまあまあイケる。
・ソースが決め手。もしも違うソースだったら、美味しくなくなる可能性も。例の専用ソースとやらが気になる。
・結構油っこい。そして、炒めすぎ。
・以前にレストラン「タヌキ」で食べたやつよりは美味しい。
というわけで、残念ながら(?)そこまでおそロシアな味にはならなかった。お腹がいっぱいになったところで、ロシア焼き蕎麦の調理実験は終了した。
もし専用ソースが手に入ったら、ぜひとも味見してみたいところであるが、果たして日本の美味しいソースに対抗できるであろうか?
専用ソースを手に入れた、もしくは食べたことがあるという人は、ぜひ教えてほしい。
ところで、皆さんはお気づきだろうか?パッケージの「焼き蕎麦」の説明には、肉は「豚肉」と書かれていたが、レシピには「牛肉」と書かれている。
どちらが良いのかはわからないが、おそらくどちらでも良いのであろう。さすがはロシア、適当である。
文章:とらまるはなばち
写真:ちば