5月10日に行われたイベント、ソ連カルチャーカルチャー3のまとめその4。
今回はソ連カルカル3にゲストで登壇していただいた、 食を旅するイラストレーター・織田博子さんの発表、「女一匹シベリア鉄道「途中下車」の旅」を織田さん本人にまとめていただきました。
『女一匹冬のシベリア鉄道の旅』が2017年7月15日発売!
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こんにちは!食を旅するイラストレーター・織田博子です。
その時の発表資料を振り返ってみたいと思います。
女一人でシベリア鉄道に乗ってきました。
しかも、今回は冬。「帽子をかぶっていないと脳が凍る」と言われる、冬のシベリア。
そんなシベリア鉄道を、途中下車しながら3週間かけて横断したことをお話ししました。
私は、世界各国の家庭料理を訪問し、イラストや文章で家庭料理やその国の文化について紹介しています。
また、世界のおじちゃんやおばちゃんもよく描いています。
なぜ、おそロシ庵さんで記事を書いたり、ゲストトークをさせていただいているかというと
2015年1月に「女一匹シベリア鉄道の旅」(イースト・プレス)というコミックエッセイを出版しているからです。
参照:「日本人の女性が一人でロシアを旅したマンガ『女一匹シベリア鉄道の旅』をロシア人に解説してもらった」この本では、2010年に一人でシベリア鉄道に乗った時の経験を描いています。
前回は夏に乗ったので、今回は冬に乗ってみたい。
前回は西から東へ向かったので、今回は東から西へ向かいたい。
ということで、2回目のシベリア鉄道一人旅に行ってきました。
東京から青春18きっぷを使い、24時間かけて鳥取の境港へ。
境港から韓国のフェリーに乗り、2泊3日かけてロシアのウラジオストクへ。
ウラジオストクからモスクワにシベリア鉄道で向かう途中、
ブリヤート共和国・ウラン=ウデ、イルクーツク、ウドムルト共和国・イジェフスク、ブラン村などで
途中下車をし、3週間かけてモスクワに到達しました。
シベリア鉄道の最東端、ウラジオストク駅から出発です。
夜11時に駅に着きましたが、駅舎の時計の針は4時を指しています。
これは、時計が壊れているわけではないんです。
ロシアの鉄道はモスクワ時間を基準にしていますが、モスクワとウラジオストクは9,000キロも離れているので、時差が7時間あるためです。
気温はマイナス0度ほど。
ホームにいる人は皆、シャープカ(帽子)をかぶったり、プラトーク(ショール)を頭に巻いています。
なにもかぶっていない私を、ロシア人は奇妙な顔をして眺めていきます。
それというのも、ロシア人は小さいころからお母さんに「脳が凍るから、帽子をかぶりなさい」と言われて育ったからです。
さて、車掌さんのチケットチェックが終わると、やっと中に入ることができます。
シベリア鉄道では12時ころになると強制的に消灯してしまいます。
右は昼間に撮影した部屋の様子です。
夜には上段のベッドを引っ張り出し、ソファーは下段のベッドになります。
上段の方が人気があり、乗車賃が100ルーブル(250円)ほど高くなります。
2等車の車両の中の間取り図を描いてみました。
車輌の左と右端にはトイレがあります。
細い廊下沿いに客室が8室(4人部屋)。
廊下と部屋を区切る扉はいつも開け放たれ、乗客同士は気軽に行き来しています。
車掌室の隣は温度調整室。
夏も冬も、車内の温度を20度前後に保っています。
ここが壊れると、冬は外気がマイナス20,30度になる(マイナス50度という地域も)ため、乗客は全員死亡します。
でも、壊れないように石炭ストーブを使っているから大丈夫。
廊下や食堂車の様子です。
廊下は人が二人すれ違うのがやっと、というほど狭いです。
食堂車はかなり豪華な作りで、不愛想なウェイトレスさんが持ってきてくれるご飯はなかなかおいしい。
しかし、2皿で500ルーブル(約1250円)ほどとかなり高いなので、乗客はあまり利用していません。(この時はたまたま混んでいた)
さて、「シベリア鉄道に乗った」というとよく聞かれる質問がこちら。
1.何をして過ごしているの?
2.食事はどうしているの?
3.トイレやお風呂は、ちゃんとしたものがあるの?
4.周りのロシア人とどうやってコミュニケーションをとってるの?
では、まず1.何をして過ごしているの?
寝る。
時間になると皆でご飯を食べます。
それと、ロシアでは数独が流行っていて、駅の待合室や郵便局、スーパーマーケットなどで
たくさん冊子が売っています。
なにかお店でサービスをうけようと思ったら30分は待たなくてはいけないロシア。
数独は、格好のヒマつぶしなのかもしれません。
ロシア人はひたすら、景色を見るのが好きな人たちです。
1時間は平気で見ているし、もっと好きな人は4,5時間窓の前に貼りついています。
私も真似してみてみましたが、単調な景色が続くだけですぐ飽きてしまいました。
「この景色の何が楽しいの?」とロシア人に聞いたところ
「たくさん木や湖があって、川がある。あと、雪とか」と言っていました。
シベリア鉄道は、1日に1,2回ほど、主要な駅に止まります。
その時は、30分~1時間ほど停車するので、みんないそいそとコートを着こみ、外にどっと出かけていきます。
外気がマイナスだろうが、雪だろうがお構いなし。
新鮮な空気が大好きなロシア人たちは、あったかくて快適な電車の中よりも、寒くて新鮮な空気が吸える外が好きみたいです。
駅ではピロシキ(ロシア風惣菜パン)、ヴァレニキ(すいとんのようなものを焼いたり煮たりしたもの)、ゆで卵や自家製ソーセージなどを、地元のおばちゃんたちが売りに来ます。
ピロシキ1つ10ルーブル(25円くらい)から。
安くておいしい、地元の味です。
他にも、野菜やパンを持参し、ナイフで切って軽食を作ったり、インスタントラーメンを食べたり。
右のインスタントラーメンはウラジオストクで購入。「焼きそば」と豪快に書いてある隣には、キリル文字で「ヤキトリ」と書いてあります。
確かに、麺の上に鶏肉のカスのような感じのが乗っていました。
トイレは、車掌さんが掃除するのできれいです。
ただ、線路に直接ボットンするので、日本のトイレに慣れているとビックリするかもしれません。
衛生上の問題のため、駅に到着する30分前と、出発した30分後はトイレを使用することができません。
2等車、3等車にはシャワーがついていません。
他にも、温度計や時計の電子案内板(古い車両だと、古い温度計が張り付けてあるだけ)。
「サモワール」と呼ばれる湯沸かし器などが設置されています。
サモワールは、いつでもどこでもチャイ(紅茶)を飲みたいロシア人にとってとても便利な器具です
乗客は意外なことに、地元や周辺国の人が、仕事や帰省で使うことが大半のようです。
観光客に会うことは稀です。
そして皆すごく暇なので、言葉が通じなくてもジェスチャーや辞書でいろんなことを聞いてきます。
左は、ウズベク人とタジク人が私の似顔絵を描いているところ。
私はiPhoneアプリの、オフラインで使える翻訳機を使っていました。これはとても便利。
今回の旅のハイライトは、ロシア連邦内ウドムルト共和国のブラン村を訪問したことでした。
世界でもっとも有名なおばあちゃん達「ブラン村のおばあちゃん達」を訪ねるためです。
ブラン村のおばあちゃん達ってどんなアーティスト?
紹介する4コマ漫画を描いてみました。
私はブラン村のおばあちゃん達の大ファンで、facebookのファンページにファンアートを投稿したり、ファンと交流したりしていて、いつかブラン村に行ってみたいと思っていました。
それで、実際にブラン村に行ってみたら、
コンサートのリハーサルのために村の文化会館に集まっていたおばあちゃん達にお会いすることが出来ました!
それどころか、おばあちゃん達手作りの家庭料理でもてなしてもらった!
その様子が、ロシアのニュースになりました。
「ブラン村のおばあちゃん達に会うために、電車で地球を半周した日本人女性」
しかし、記事はロシアらしく、自由奔放でした。
日本では時速500㎞出る電車があるそうです。(リニアモーターカーの記事を読んだのか?)
特に、「ロシアの電車は、とっても遅かった!」これは記者のオリジナルの部分で、たぶん記者が最も主張したいところだったのでしょう。
いろいろな経験をしつつ、シベリア鉄道の終着駅、モスクワに到着しました。
距離にして9,000キロ。今回も長い旅でした。
シベリア鉄道に12日間乗ってみて、シベリア鉄道はあらためて「素顔のロシアに触れる旅」だと感じました。
ヒマさえあれば飲み会をし、好奇心たっぷりで外国人旅行者に質問をし、酔っぱらってオヤジギャグを言うロシア人たち。
シベリア鉄道にいつか乗ってみたい、という方、「いつか」と言わずにすぐにでも、シベリア鉄道の魅力にふれていただけたらと思います。
『女一匹冬のシベリア鉄道の旅』が2017年7月15日発売!
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織田博子
「女一匹シベリア鉄道の旅」(イースト・プレス)
Twitter @OdaHirokoIllust
現在、「女一匹シルクロードの旅」執筆中。
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